(更新した日:2022年7月3日)
◎自給自足の夢
暮らしの中で食べていくための「仕事」はフルタイムでしたら最低一日8時間。週で5日。月でいうと20日。年間200日くらいの時間を費やしているわけです。
社会の歯車として過ごしていますと、納期などの締め切り、ノルマ、人間関係に悩み、経営者なら売上とか利益が思うように上がらないことで凹んだりします。
そんな疲れている現代人ならば時々思うはずです
「自給自足できたら、こんなに働かないでアルバイトとか最低限の収入で楽しく生きられるんじゃないか」
と。
私は篶竹荘と第2ペンギン荘の移住者ばかりの畑もやったことのないメンバーで畑を借りて数年になりますが、やる前はいつもそう思っていました。
私たちmの畑はそんなに広いわけではなく、自給自足を目指してはいないのですが、はてさて、自給自足するには畑とかの大きさってどのくらいいるんだろうと疑問に思ったのです。
そこで、ちょっと調べてみました。
自給自足を目指したい、そんな暮らしを送ってみたい、と思っている方の参考になったら幸いです。
◎どこまで自給自足をするのか?▶【前提条件】の設定
▶資材も買わない?
さて、自給自足にあたって基準を作らねばなりません。
例えば
〇種は一番最初に買ったらあとは毎年種を保存して来年にまた蒔くのか。
〇肥料は自前で作るのか。
など。
種を取るなら種を取るための株を作らなくてはならないですし、肥料を自前にするならば、牛糞などの堆肥ならば牛を飼わねばなりませんし、落ち葉で堆肥を作るなら落ち葉が拾える山と、発酵熟成させる土地も無ければいけません。
なので、これは「①資材はある程度は購入する」という前提で話を進めましょう。
(※数年前に公園の落ち葉を拾って堆肥を作ったことがあるのですが、購入して漉き込んだ牛糞の方が圧倒的に収穫量が多かったです→貧弱な栄養の土地では収量が落ちるため、その分広大な面積を耕さなければなりません)
▶何を育てる?
三大栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質)、五大栄養素(+ビタミン・ミネラル)という言葉がある通り、これらをカバーするのが自給自足道の真髄でしょう。
となると主食(炭水化物)として米。副菜(ビタミン・ミネラル)として野菜。タンパク質、脂質の元として卵と肉が取れるニワトリがよさそうです。
米は麦でもいいですが、地方に行けばそこら中に無人精米所がありますし、米の方が勝手が良さそうなので米を作ることにします。
野菜は必須ですが、味噌などの調味料を作るための大豆とかは「①ある程度は購入する」精神でやめておきましょう。そこまでやると海まで行って海水から塩も作らねばなりません。
タンパク質・脂質としての鶏も必要です。大豆などで得る方法もありますが、ベジタリアンなどではなく、ごく一般的な食事にありつける前提で考えたいと思います。鶏糞という肥料の副産物もありますし。
↑牛とか豚でもいいのですが、飼料・畜舎などの鶏と比べ物にならないくらい手間暇金がかかるので鶏ということにしました。くず野菜も食べてくれますし。
と、いうことで「②米・野菜・ニワトリ」の範囲で自給自足したいと思います。
▶どのくらい育てる?
お次は、どのくらいの「量」かです。
ネットを調べると耕作面積当たりの平均収量とかを見つけることができますが、プロの農家では私たちは無いわけです。加えて、あくまで自給自足としての農業の為農家さんのように少品種大量生産ではなく、多品種少量生産となることも、すべての作物にとって効率の良い作付けができなそうという見込みもあります。
ここは、せっせと面倒をみて農家さんの8割くらいの収量が見込めるくらいに安全率をかけておいた方がよさそうです。
ということで「③収穫したい量を得る田畑の面積はプロの1/0.8倍(プロの1.25倍面積が必要)」とします。
▶収入を見込む?
さて、①~③でだいたい前提条件がよさげな気がしているのですが、心に少し引っかかるところがあります(私はですが)。
「①資材はある程度は購入する」はいいんだけど、手間暇かけるんだから、その資材購入の費用くらい賄いたいな、と。
どうせ作るなら、ピーマン10株が20株になったからといって、労力が2倍になるわけではないはずです。
ここは「資材購入のための収入」を得ることで資材を購入してしまった罪悪感を払拭する免罪符がぜひとも欲しい所。
では、自分で食べない分の収量はどのくらいに設定するのか?
これは全然わかりません。直売所や道の駅などで販売することを想像していますが、いくらで売れるかは豊作か不作かによって違うと思いますし、まあ、ここは適当に「④お小遣い程度は売りたい(自給自足面積の1.5掛け)」としておきます。
▶条件まとめ
まとめると以下の前提条件となります。
①資材はある程度は購入する
②米・野菜・ニワトリを育てる
③収穫したい量を得る田畑の面積はプロの1/0.8倍
④お小遣い程度は売りたい(自給自足面積の1.5掛け)
よしよし。
それではこれをもとに必要な田畑+鶏舎の面積を出していきましょう~!(テンション上がってきた)
(※計算式も載せておきますので、例えば「売らないで自給自足分だけでいい」という人は1.5掛けをしないなど調整してもらえばそれぞれの事情に合った面積が算出できるかと思います。)
◎それぞれの消費量と必要な面積
▶米
日本人の米の平均消費量は約60㎏。1日の消費量に割り戻すと1合ないくらいです。ただしこれは一般的な話。1日1合じゃ生きていけません。主食なのでどうやっても2合は必要でしょう。となると年間自給自足消費量は120㎏。
それに、「田んぼの収量は100㎡(1a)あたり約60㎏(農林水産省より)」と前提条件うんぬんを計算していきます。
【計算式】120㎏/年×100㎡/60kg×1/0.8×1.5=375㎡/年
つまり4a(400㎡)くらいあれば多少素人が不作の時でも食べて行けそうです。
▶野菜
さて、このあたりから数字が怪しくなっています。それでも頑張って数字を拾ってきて出してみます。
厚生労働省のページより成人が1日に必要な野菜の目安は量は350gとのこと。
では、面積当たりどのくらい収量が見込めるか?
これは「作物統計調査 作況調査(野菜) 確報 平成29年産野菜生産出荷統計」から拾ってきました。
とはいえ、重さだけの目安量では統計を見てみるとピーマン、トマト、ナス、キュウリの夏野菜4兄弟が100㎡あたり1000㎏も取れるため、これだけ作っていれば少ない面積で「1日の必要量の重さ」だけは簡単に満たせてしまいます。
いやいや、それはちょっと。。
これじゃあほんとにナス科+きゅうりの無限ピーマン状態になってしまいます。きゅうりばかりで河童になってしまいます。
そこで、根菜(大根とか)・葉茎菜(・果菜(ピーマンとか)・果実(スイカとか)のすべての単位面積(㎡)当たりの収量(kg)を足し合わせ平均を出してみます。
これならまあ、「いろいろな野菜をまんべんなく育てる」ということになるので良いかと。
で算出したあらゆる野菜の面積当たり収量の数値が約3.2㎏/㎡(平成29年・全国平均)でした。
ということで数値が出そろいましたので計算して行きますと、、
【計算式】0.35(kg/日)×365(日/年)÷3.2(kg/㎡)×1/0.8×1.5=74.85㎡
といった数値が出てきました。1アール無いくらいで野菜はあらゆる種類をまんべんなく自給自足でき、しかも売って種や肥料代にもできることが分かりました。
※ちなみにこちらの数値は、1毛作の場合になります。通常、夏野菜を育てた後は大根などを育てたり、冬を越しの玉ねぎを植えたりするので、実際はもっと少ない面積で可能だと思います。
▶ニワトリ
野菜よりさらに数値が怪しくなってきますが、頑張ります。
成人(体重60㎏)の1日に必要なたんぱく質の量は約40g(厚生労働省のページ)です。これを大原則にしましょう。
そしてその1日に必要なたんぱく質量40gですが、これは米とか豆とかにも含まれるので、半分の20gをニワトリの卵と鶏肉から得ようと思います。
食品分析開発センターによると卵1個(60g)のタンパク質量は7.38g。
ということは20/7.38=2.71個ということで毎日3個の卵が取れればいいことがわかりました。
毎日ニワトリが卵を産んでくれるとしたら3羽でいいのですが、そうも行かないので、野菜とかと同じく安全率を掛けましょう。
そうすると
【計算式】2.71×1/0.8×1.5=5.08羽≒6羽
いれば毎日卵を安定して食べられそうです。
そして、鶏1羽あたり、お互いがストレスが溜まらない理想の面積は1㎡以上/羽という数字を見つけたので、理想広さにしてあげましょう。
何といっても、ニワトリ、すごく可愛いので!友達が10羽飼っていて見せてもらいに行ったのですが、慣れてくると膝の上でウトウト寝ちゃったりして可愛すぎるので半分ペットとして愛でましょう。
ということで面積が出ました。
鶏小屋の面積=6羽×1㎡/羽=6㎡
◎面積のまとめ
以上の数値を大体でまとめますと、
1,田んぼ 375㎡
2,畑 75㎡
3,鶏小屋 6㎡
ということが分かりました。
これに農機具小屋や、肥料を作る場所などが必要なので、全部こみこみで約0.5反(500㎡)あれば自給自足の農的暮らしを送ることができそうです。
◎手間をたのしめるか
さて、500㎡が広いと取るか狭いと取るかはそれぞれですが、田舎に行けば使われていない耕作放棄地が山ほどありますから年間数万円とかで借りることは大してハードルにはなりません。
500㎡というと約22m四方。これで一人が自給自足する広さですから、例えば4人家族なら2000㎡、2反が必要です。
こうなると、小型でもいいので耕運機などの農業機械は必須でしょう。
あとは何より手間を楽しめるかどうかです。
少なくとも一度借りたら最低1年は、普通なら10年単位で田畑を耕し続けなければなりません。
シェアハウスのメンバーで今耕している畑は20坪(60㎡)くらいの小さな土地です。そこを毎年3~4人で耕していますが、それでも結構手間がかかります。一時期手を広げてこの数倍の面積をやったことがありますが、草取りなどを回せなくて手放しました。
それでも数人で回しているため、好きな旅行にも行くことができますが、これを家族でやるとなると、旅行は農閑期の冬、旅の思い出はいつも寒空・・みたいな制約も生まれることを忘れてはいけません。
東京などの都市圏ではどうかわかりませんが、地方に移住してくれば、大体自治体が年に一度市民農園の募集をしています。多分2~40㎡くらいの区画です。
借りた春先、一見して、「狭っ!」って思うかもしれませんが、1年やってみるとその労力が分かると思います。
戦いはほぼ草取りです。梅雨あたりから雑草が牙をむき始めます。
自給自足には憧れますが、まずはそういうクッションを入れることをお勧めします。
◎農的暮らし、自給自足系の記事たち
ということで、自給自足をするための必要な田畑の面積を計算してみました。
他にも農的暮らしや自給自足っぽい記事を書いているので最後に紹介したいと思います。
【農的暮らし系】
▶農的暮らし、その前に。畑をやってわかったメリット・デメリット
▶野菜品目別の所得―「農的暮らし」は収入でなく充実度で測る?
【自給自足・DIY系】
◎まとめ
さて、そもそもこの記事は、金銭的・時間的な自由を得るために自給自足について必要な面積を出してみるって話でした。
が、やはり、金銭的にも、現物支給的にでも食い扶持を得るのはそれなりに大変そうなことが分かりました。
ただ、これはあくまで前提条件があってのお話です。
趣味程度の家庭菜園をやって、食費の足しにもなるし、緑と触れ合えて楽しい・・・ってのでもいいですし、農業法人を立ち上げて大々的にやるんだ!・・・という話でもいいと思います。
とりあえず、数字の根拠は(あやふやなところもありますが)なるべく出してありますので、自給自足が気になる、地方に移住して農的暮らしをしたいんだ!…という方は数字をいじってみてご自分に合った必要面積を出してみてください。
また、一応うちも小さな畑を有志でやっているので、まったく畑やったこと無いけど一念発起して地方移住して畑を借りる!・・・と見切り発車するその前のお試し場所にはなるかと思います。
ご興味あれば篶竹荘、または第2ペンギン荘のお問い合わせからお尋ねください。
やはり興味がある分野なので思った以上のボリュームを書きなぐってしまいました。
移住、2拠点生活、畑、シェアハウス、下宿、自然、共同生活、農的暮らし、自給自足などそんなキーワードに興味がある方の暮らしの参考になれば幸いです。
それではでは。