木賃アパートが街の縮図!??

◆木賃アパート

木賃アパート(もくちんあぱーと)と言うものがあります。1950年代、人口が激増した頃に都市部で多く建てられた賃貸住宅の形式です。

多くが木造民営の共同住宅で、狭小な部屋で畳敷き4.5畳から6畳の一室と収納のみ。キッチン・トイレは共用、浴室なし。入浴は銭湯などを利用することになります。

一般的には居住環境が悪い住宅だと今では認識されています。

在来工法や小屋組みのトラスで作られた建物がほとんどで外壁は漆喰もしくはモルタル仕上げ。木サッシと言った今では天然記念物モノ。逆に言えば昭和レトロな雰囲気を残す後世に残していきたい古き良き面影がある文化的・建築的価値のある建物だとも言えます。

一方、昭和中期の住宅需要の高まりにより安く早く大量に建てられた経緯から劣化が激しく、建て替えなどにより減少の一途をたどっています。

木賃アパートで誰もが想像しやすい所ですと「トキワ荘」。もしくは多くの四畳半フォークで歌われる歌詞に出てくる下宿を思い浮かべれば分かりやすいかもしれません。

◆木賃アパートが最も多様性のある賃貸住宅のかたち??

さて、そんな木賃アパートですが、木賃アパートが、木賃アパートこそが、あらゆる住まいのかたちで小規模で実現できる街の縮図なんじゃないかと最近考えています。

住宅地ではなく自然発生的に形成された街を考えてみます。

そこには子供からお年寄りまであらゆる人が住んでいますし、あらゆる人を受け入れる施設が存在します。

また、新興住宅地においてもユーカリが丘などのように、自然発生的な街を目指して、住民のカテゴリが均一化しないように工夫している住宅街などもあります。

また、街に暮らすということは同じ街区に住む人たちとも多かれ少なかれ交流することになり、田舎で問題にされがちな過度な交流は考え物ですが、ほどよい、快適だと思えるくらいの交流があることが望ましいことだとも思っています。

私たち合同会社SumSumは篶竹荘第2ペンギン荘と言うシェアハウス・下宿を長野県松本市の温泉街・浅間温泉の地で運営をしています。

シェアハウス・下宿・・・と謳っているのはシェアハウスって今風の名前が付いたけれど、要は下宿のことだよね?・・・と言う思いがあるからなのですが、ある意味シェアハウスも自然発生的な街を形成することを目指した施設だとも言えます。

マンションやアパートと同じように外部から住民を集めることは変わりありませんが、多くのシェアハウスで住民同士に交流を促しているという点が異なる点になります。

しかし、大規模なシェアハウスでしたら実現可能かもしれませんが、数人、多くても10人前後のシェアハウスの場合ですと例えば20代だらけの中に70代が一人・・・などと言う暮らしはなかなか考えることができません。

施設によってはあらゆる年代・性別・家族構成の方を受け入れるような小規模なシェアハウスも存在しますが、積極的に交流を促すという点で世代・性別などのギャップはどこかで必ず顕在化してきてしまうような気もしています。

結果、多くのシェアハウスはある程度居住してもらえる年代を絞ったり、趣味嗜好に共通点のある住民を集めたりするようになっています。

これは住む人たちに快適に過ごしてもらいたいという思いからである一方、入居希望者をある程度カテゴライズしてふるいにかけてしまうということでもあるのです。

本来はあらゆる人が住み、あらゆる考え方などを聞けたり、吸収出来たりするような施設が好ましいと思われるシェアハウスですが、住民同士で積極的に交流をしてもらうという点で、入居の時点である程度話が合いそうな人たち同士を集めるということになってしまっています。

もちろん、住んでいる人にとっては趣味嗜好が近く、話が合う人同士で住む確率が上がるので快適な暮らしを送りやすいという大きなメリットがあります。

篶竹荘・第2ペンギン荘は多くのシェアハウスの場合よりは幅広い年齢層の方に住んでもらえるような施設を目指していますが、それでもある程度趣味が近い人などが集まるように工夫をしています。

それはそれでいいのですが、「より自然な暮らし」という点で考えると住民の嗜好が偏ってしまい、色んな考えを知る機会が失われているというデメリットもあります。

視野を広げるには色んな人とお話してみたりすることが大事な気がするからです。

そういう意味では木賃アパート、もしくは下宿と言った住居の形がより自然発生的に形成された街の縮図なのではないかと考えられるわけです。

現代のアパートでは隣人同士の交流はあり得ません。シェアハウスでは積極的に隣人との交流を促します。

そして木賃アパート・下宿はその間の形になります。

共同の台所、トイレなどから自ずと住民同士は挨拶などをすることになりますし、風呂なしでしたら銭湯などに通い、街の人たちともお話する機会があるでしょう。

一方、積極的な交流を促していない分、シェアハウスとは違い、それぞれの生活が基本に合って・・・という暮らし方になります。

(篶竹荘・第2ペンギン荘は「ふつうの暮らし」をテーマと言うか目指していますので、シェアハウスと言っても、この記事で言う木賃アパートよりのシェアハウスかもしれません)

これならば、あらゆる年代、性別、家族構成、職業、趣味嗜好などの人たちも受け入れられるような施設になる気がしています。

街でも共同住宅でも住民同士の「ほどよい距離感」が大事だと考えるからです。

と、言うことで木賃アパートはより街の縮図に近い住居の形態なんじゃないかと思い、そして何とか現在も残っている木賃アパートを活用してアパート以上(一般的な)シェアハウス未満の心地よい交流のある施設を作ったらいいんじゃないか、むしろ作りたい・・・なんて思っているのですがどんなもんなんでしょうか?

そもそも篶竹荘も第2ペンギン荘もシェアハウスを謳いながら「そっち方面」を目指していました。

ただ、どうしても施設・建物の関係上、ある程度年代などを絞らねばならなかったのです。でも、木賃アパートなら!??

いつかやってみたいものです。(松本市内に木賃アパートって残ってるのでしょうか?もしくは東京とかで事業を展開することになるのでしょうか??そんなお金は無いんじゃないでしょうか??合同会社SumSumには。。)

 

◆木賃アパートに価値を付加。古くて新しい共同住宅

ただ、木賃アパートの活用と言っても大きな問題があります。

老朽化です。

多くが1950年代に建てられた建物。

築70年です。

狭小・共同キッチン・共同トイレ・風呂無し・・・と言うのは巡り巡って一回りして現代の物を持たないシンプルな暮らしには適合していると考えられます。

むしろシンプルな作りである木賃アパートの需要は一定数あるんじゃないかとも思います。

レトロな雰囲気も魅力を感じます。

ただ、老朽化はどうしようもない。

じゃあ、新築を建てるようなお金を使ってリノベーションするのかという選択を迫られた場合、持ち主の多くが立て替えて普通のアパートにしてしまう・・・というのも理解できます。

ただ、築70年と言う文化的価値のある建物を残していくというのも大事なことなんじゃないかと思うわけです。

そんなことを本記事で書いてみようかなーと思っていたら、こんな記事を見つけました。「木賃アパートには、未来社会を構築するヒントがある」(Meiji.net)。

だいぶ近いことを書いている記事でしたので興味がありましたらご一読ください。

さて、現在合同会社SumSumでは篶竹荘と第2ペンギン荘と言うシェアハウス・下宿を管理・運営していますが、もともとは松本市北深志で始めたカンデラゲストハウスというゲストハウスが原点でした。

当時はゲストハウスという宿の形態がまだ日本ではなじみがなく、海外ではあたりまえといった状況で、日本でも旅好きのための宿があってリーズナブルに旅ができたらいいのにな・・・という思いで始めたのでした。

そして、初めて見ると、松本が好きな旅人が集まり、その中には松本で暮らしたい!・・・と言う話も聞くようになりました。

私たちも移住者です。

移住のハードルは多少わかっているつもりでした。そのため、移住者のための住処を作ろうということになり、シェアハウスである篶竹荘、そして第2ペンギン荘を始めたわけです。

そして、初めて見て、住む人たちがどうやったら快適に過ごせるかをいつも考えているのですが(実行できているかは別ですが・・・)、だんだんと多様性のある住民が共同して”ほどよい距離感”で住むのも一つの手なのではないかと思い始めています。

ただ、篶竹荘も第2ペンギン荘も施設の設計上、なかなか対応しきれていない部分があります。

当施設は比較的年齢幅のある住民に住んでいただいている施設だと思っていますが、それでも60代とか70代の方が来られた際は断ってしまうことになるでしょう。

ですが、松本市内の中では落ち着いた雰囲気のあるシェアハウスと言うことで、最も年齢の上の方で70代の方が見学に来られたこともあります。

ですが、お断りしてしまいました。

でも、本当はすごく住んでほしかったのです。

住んでほしかったのですが、制度設計上、ウチでは受け入れられないということで断ってしまったのです。

これまでなかった住居の形としてシェアハウスは絶対必要ですし、この暮らし方がもっと増えればいいと考えています。

一方、アパート以上シェアハウス未満の交流のある木賃アパートなどもこれからの社会には必要な住処の形だと考えています。

それは、もっと多様性のある人々に住んでもらえる施設として。

・・・と言うことで今回は木賃アパートについて書いてみましたよ。

そうです。先日、東京の豊島区にある「トキワ荘」に行って木賃アパートに被れているのです。何せ藤子不二雄大好きなのでトキワ荘は私にとって聖地なのです。

ではでは。

~ほかにも記事書いています!~

▶合同会社SumSumおしらせ・読み物

→もっともカタい文章を書いています。

→「こうやったらもっと暮らしって楽しくなりそうだなー」みたいなことを書いています。

→「ふつうの暮らし」「日常」をちょっと楽しくする提案やデータなどをもとにした考察みたいなのも。

→自分にとっての「快適な暮らし」を求めている人にとって何かのきっかけになれば。

▶篶竹荘「ブログ

「ぽん」のInstagramをもとに短い文章で書ききれなかった情報を加えて「より詳しい」日常、ふだんの暮らしを投稿します。

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→第2ペンギン荘のマスコット「第2ペンギン」がいろいろやってみる「てい」で書いています。

→調子に乗ってラインスタンプも作りました

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